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(アオ主)葦は霧の中で揺れる

まだ初期の方のアオ主。
現実は認めているけれど、感情がいまいち追いついていない感じの主人公と、まだ無機質なアオガミさんとの話。

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鮮やかな青と金色の瞳が、とかく印象的な存在だった。
長身の男性は己を神造魔人アオガミと名乗り、自分が助けるから安心して欲しいと機械的な、けれどもどこか優しい声で協力を申し出てくれた。魔界化した東京だった世界を生き抜くために。
他の方法は無かった――と、思う。
通常ならば疑い、警戒する案件だっただろう。「知らない人にはついていくな」という言葉が脳裏を過ぎった。だが、あの金色の双眸に真っ直ぐ見つめられ、差し伸べられた手を見た瞬間に疑心が溶けてしまったのだからしょうがない。
そして、その判断は――多分、間違いでは無かった、と思いたい。
人造物と合体し(合一、だと相手は言っていた)、自分の中にもう一つの精神が存在するようになった。
一つの身体に、二つの思考。それは何だか不思議な気分になるが、意外とそう悪くはない。
むしろ、この存在は――……。
「少年。随分と長考しているようだが、何か問題か。」
機械的で低い声が頭に響き、思考を浮上させる。
砂漠の中にぽつんと放置された電車。その屋根に腰を下ろし、さてこれからどうしようかと考えていたところだった。……なのに、いつの間にか過去を回想し、自分の中に居る存在について考えが逸れてしまっていたのだ。
「少年?」
反応がないので、アオガミがもう一度声を掛けて来た。ああ、ぼんやりしている場合ではない。
「ごめん。ちょっと、葦になっていた。」
「……“考える葦”――思想家の言葉、だったか。」
自分のメモリー内を検索したのだろう。この機械的な神造魔人は、実に聡明でいる。
「君は不安なのか。」
深読みまでされてしまった。生真面目だ。こういうところは人っぽい。
「いやいや、そこまで深刻になっていたわけじゃないよ。」
ただぼんやりしていただけだから、と付け加えて笑えば、相手が沈黙する。少しの間を置いてから、アオガミが言葉を吐いた。
「私の考え違いだったか。すまない。」
「うん、別に謝らなくても――」
「――だが、これだけは覚えていてほしい。私は君を助けると、そう約束したことを。」
「……真面目さんだなあ、アオガミは。うん、ありがとう。」
硬質ながらも響きの良い低音で、真っ直ぐな誓いを口にする神造魔人。
しかも相手は照れもせずに口にするので、逆にこちらが照れてしまう。顔には出さないけれど。
ふと、自分の肩口に視線を流す。
長く青い髪。綺麗な青。地面すれすれのそれは、疾駆する度に青い流線を描いて荒廃した世界の景色を鮮やかにさせる。
これはアオガミとの合一の産物――副作用?――だから、自分のものではない。
それから、自分の目。満月を思わせるこの金の双眸も、アオガミのものだ。
肉体は彼に、知識は自分に準拠したこの姿。
ナホビノ。禁忌の存在。
だが自分は“忌まわしい”とは思わない。何故なら、彼はこちらの運命をその手で“掬って”くれたのだから。
「アオガミの手は、大きい。」
ぽつっと呟けば、相手の戸惑う気配がした。
「……急にどうしたのだ、少年。」
「別に。ただの、考える葦。」
先程と同じく、今のも特に意味のない思考だと伝えれば、水面に落ちた石が作る波紋のように、相手の戸惑いが広がり、揺れ、……やがては静まって、平坦な声が答える。
「君は本当に色々なことを考えるのが好きなのだな。」
そこに微かな苦笑めいた響きがあったのは、気のせいだろうか。
綺麗な色を持つ、神造魔人。
その煌めきに見惚れたからあの時その手を取ったんだ、と伝えたら、彼はどんな顔をするのだろう。恐らくは、無機物的な表情のままなのだろうけど。
「アオガミ。」
「何だ、少年。」
「俺はすくえるのかな。」
「……確率での回答は不明。だが、私たちが力を合わせれば乗り越えられるだろう。」
「……ふ。そうだね。」
この神サマは、気休めを言わない。けれども、言葉はどこか柔らかくて優しい。
合一し、一時的な神の存在となったが、考えるのは人間だ。
掬うのも、救うのも、選択し、実行するのは自分自身なのだ。
だから時々、些細な時間を割いて考えるようになった。
考える。
考え続ける。
色々なことを。様々なことを、ぼんやりと。
葦のように、ふらふらと狭間で揺れながら、彼の神造魔人の――アオガミのことを、考える。
彼はどこまで信用できるのか。本当に信頼たりうる存在となるのか。
未来は見えず、五里霧中。
思考も感情も、今は葦の如くゆらり揺れて定まらない。
数多の選択の果て、その運命の先に、彼が側に居るのかどうかを考えて……何もかもはまだまだ、霧の中。
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